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だれでもけずれる鉋
 
裏金合わせ。
 
鉋の世界においても、すでにイノベーションの拡散が起きていることをご存じでしょうか。例えば「裏金合わせ「には、私が知る限りすでに4種類の異なる方式が存在しています。ここで言うイノベーションとは、「新しい活用方法」のことです。
裏金合わせは、髪の毛一本ほどの微妙な調整を必要とする技法として知られています。これらの新しい仕組は、小規模な商品開発から始まりました。画期的な開発が行われているにも関わらず、これらがホビー製品として扱われているせいか、(本職)と言われる職人たちの間にはあまり注目されていないのには驚きです。実際、現在「名人」とされている職人たちが使用している裏金の技術も、もともとは素人向けの鉋から始まったものであることを知ってほしいです。
 
  
  鉋が上手く削れない
 
素人が鉋を使って削ることは不可能だと言う職人が多くいます。しかし、よく見ると、子供でも削れることを示す写真が存在します。これは、鉋が正しく調整されていれば、少しの練習で誰でも削れる道具であることを示しています。削れない理由は、単純に鉋が削れるように仕立てられていないからです。たとえば、裏金合わせが適切でない場合も含め、道具の調整が不十分なだけなのです。
確かに、言葉や文字で説明すると、たとえば「髪の毛一本分」といった数値が出てきます。このような表現は初めて聞く人にとっては神業のように感じられるかもしれませんが、実際には工夫次第で誰でもできる簡単な技術です。そもそも、市販されている鉋はそのままでは削れる状態では販売されていません。
大工が鉋を使う現場を見ると、数種類の鉋が用意されていることがわかります。それは、削る目的—粗削りをするのか、薄削りをするのか—に応じて使い分けているからです。一方、市販されている鉋にはそのような区別がなく、薄削り用として特化されていないものも多いのです。同じ銘の鉋であっても、職人によって切れる場合と切れない場合があり、それを“相性”と呼ぶこともあります。
鉋の切れ味は道具の仕立てによって決まります。この仕立ては各自が独自に行うため、結果には当然個人差が生じます。たとえば、薄削り大会では、裏押しの際に押さえ棒を使わない職人が多いことが知られています。押さえ棒を使わずに裏押しを行う場合、糸裏と呼ばれる型を作ることが難しくなります。本来の裏押しを正しく理解していないからであり、とくに薄削りにおいては刃裏の傷を手作業で消すことは困難です。鉋の焼き入れがそれほど甘くないため、裏押しの方法が適切でない場合、その効果は十分に発揮されません。
さらに、都合の良い我流が見られる例として、手のひらに収まらない穂の長い立ち鉋があります。これは、与えられた範囲での使用にとどまる知識不足の結果と言えるでしょう。このように、鉋がうまく削れないという問題は、もはや素人の問いではなく、プロの世界でも見受けられる疑問なのです。
 


 

 

 

日本の職人
 
   
 
日本の職人技術の継承には独特の文化があります。それは、教えられるものではなく、自らが観察し盗むものとして続いてきました。この背景には、製品が完成するまでに多くの工程があり、それぞれが職人たちによる分業で成り立っているという事情があります。
たとえば、剣術における“〇〇流”と呼ばれるように、製作工程にも地域や流派ごとの違いが見られます。建築の分野では“掘る”や“削る”といった作業が分業で行われていました。日露大戦の影響で職人不足や技術の断絶が起きると、誰が削っても逆目が起きないような外国の技術が取り入れられ、それが今日一般的に使用される二枚鉋へとつながっていきます。
たとえば、是秀(これひで)の存在から分かるように、当時は鑿(のみ)の鍛冶職人はいても鉋(かんな)の鍛冶職人はいませんでした。そのため、鉋台の仕込みは使用する職人自身の仕事となっていました。鉋を使う作業においても分業制が敷かれ、一人親方として“穴屋”と呼ばれるような特定の技術に特化した職人が存在していました。このような状況から、職人たちは自分の仕事に合わせて鉋台を自作していたのです。
1965年の東京オリンピックが開催される少し前まで、職人たちが“煙草包丁”を使って小鉋を作ることが一般的でした。その中で、西岡常一さんが古文献からヒントを得て作り上げたのが、現在の槍鉋です。彼の功績は、失われかけていた技術を再構築し、新たな形で職人の世界に伝えた点にあります。
さらに、古い鉋台には、もったいない精神から仕込み直された跡が見つかることがあります。たとえば、堀口が二か所にある鉋台などは、その好例です。これは、限られた資源を最大限に活用しようとする職人たちの知恵と工夫を物語っています。
このように、日本の職人技術は時代や状況に応じて柔軟に変化しながらも、分業や自作の文化を通じて独自の形を保ち続けてきました。それは、伝統を守りつつも革新を取り入れる職人たちの誇りと努力の結晶です。

 
  
   
刃物の違い
   
日本の刃物は、切れ味の良さが世界的に評価されています。その特徴の一つは、刃物の「焼入れ」による硬さと耐久性にあります。焼入れとは、刃物を高温で加熱した後、急冷することで刃先を硬化させる工程のことです。この焼入れの深さや硬度が、日本の刃物と外国の刃物の大きな違いを生んでいます。
日本の刃物を研ぐ際には、しっかりと腰を入れ、一定の力を込めて研ぐことが求められます。これは硬い焼入れが施されているためであり、研ぎの技術と丁寧さが切れ味を維持する上で重要です。一方、外国製の刃物は焼入れが比較的浅く、柔らかめの性質を持つことが多いため、軽く革砥に擦るような方法でも十分に研ぐことが可能です。この違いは、焼入れの硬度だけでなく、刃物の用途や設計の違いにも由来します。
特に日本の片刃の刃物には「刃裏」と呼ばれる特徴的な設計が施されています。刃裏があることで研ぐ面積が狭まり、硬い刃物であっても効率的に研ぐことができます。この設計は、刃物が硬いから必要とされたものではなく、切れ味の持続性や研ぎやすさを追求した結果生まれたものです。
また、外国製の電動研ぎ機は、比較的柔らかい刃物には適していますが、日本の刃物のように硬度が高い場合には不向きなことがあります。特に、バフ研磨のような方法では、刃先が丸くなってしまい、鋭利さが損なわれることがあります。しかし、これは電動研ぎ機の全てが不適であるという意味ではありません。適切な砥石や設定が施された機器を使えば、高級な日本の刃物でも十分に対応可能です。
具体的には、SK鋼の刃物(一般的な炭素鋼で比較的硬度が低いもの)であれば、電動研ぎ機でも問題なく研ぐことができます。しかし、プロが使うような高級な刃物や特殊鋼で作られた刃物の場合、専門の技術を要するため、手研ぎが推奨されることが多いです。このような高級刃物は、刃の硬度だけでなく、微細な構造や形状が切れ味に影響を与えるため、丁寧な管理が必要です。日本の刃物文化は、単に刃物の性能だけでなく、それを支える職人の技術と、使用者が刃を丁寧に手入れする文化によって成り立っています。そのため、刃物の特性を理解し、適切に扱うことが大切です。